2016年6月29日水曜日

インドネシアのヤクルトレディ(ニッポン式販売術)


日本からおよそ8時間。インネシア、ジャカルタへ。
午後1時自転車に乗ったインドネシアのヤクルトレディ達が次々に地域の販売拠点に戻ってきた。ここに在籍するヤクルトレディは25人。朝礼ならぬ昼礼のために戻ってきたのだ。


彼女たちの名前が書いてあるボードを見ると「DVDを買う」「洋服だんすを買う」「指輪を買う」などそれぞれの目標が書かれていた。ジャカルタの最低賃金は2万円だが、ヤクルトレディの平均賃金は約2.8万円だ。


日本でヤクルトレディが生まれたのは1963年。ヤクルトと言えば乳酸菌飲料、しかし当時の日本では乳酸菌の存在はまだ知られていなかった。そこでヤクルトレディが自転車や腕押し車で練り歩きながら、その効能を伝えていったのだ。


それと同じ役目を今、ジャカルタのヤクルトレディ達は担っている。
街で乳酸菌について聞いてみると。
「知らないよ」
「菌を飲むなんてとんでもない」
「お腹に良い菌?冗談はよしてくれよ」
インドネシアでは乳酸菌を知らない人も多い。菌と聞くとバイキンを連想するため、乳酸菌を飲むことに抵抗感が強いという。


そこでインドネシアのヤクルトレディ達は、むやみに商品を売るのをやめた。
どういうことなのか?
それは新規の客を開拓するところをみればわかるというのだが…

ヤ:お時間よろしいですか?
客:いいですよ

いきなり商品を売らずまずはこんな話から

ヤ:私たちのお腹には良い菌と悪い菌があります。でもストレスを感じたとき、例えば疲れたときとかにお腹の中の悪い菌が増えてしまうんです。ヤクルトには良い乳酸菌が入っていて、この乳酸菌が悪い菌を抑えてくれるんですよ。

ヤクルトの効果をよくわかってくれるよう丁寧に説明していく。最後になってようやく…

ヤ:今日はヤクルトはどうしますか?次にしましょうか
客:2パックいただきます。
ヤ:2パックですね。承知しました。
客:説明してもらって初めてヤクルトのことがよくわかりました。これなら納得ですよね。


重要なのはヤクルトの効果をきちんと説明することなんです。理解してもらえばみんな必要なものだと思ってくれますから。
何よりも商品の特性を知ってもらう。ちょっと遠回りだがこの販売方法のおかげでインドネシアでヤクルトは1日に約300万本もの売り上げを誇っている。


ヤクルトは今年で誕生して50年。ちょっと見ておきたい数字がある。
ヤクルト全体の販売の58.3%がヤクルトレディ。いたる所でヤクルトの商品を見ると思うが今でもヤクルトレディが中心となって販売を行っている。


ヤクルトは今、33の国と地域で販売されている。1日約2100万本が売られている。しかし、すべての地域にヤクルトレディがいるわけではない。ヤクルトレディが販売を行っているのは12の国と地域。約4万2000人のヤクルトレディが海外で働いている。日本で働いているヤクルトレディは4万人を少し切っているので、世界で活躍しているヤクルトレディの方がもう多くなっている。
だが訪問販売で1軒1軒売っていくのは効率が悪そうに思えるのだが…


これはヤクルトの売り上げ本数とヤクルトレディの数の推移だ。2008年に急に売り上げが増えているのがわかると思う。これはヤクルトレディを一気に増やしたのが原因だ。一見遠回りをしているように見えて意外な成果を上げているのだ。


ヤクルトの長谷川さん(写真右)。ヤクルトレディをスカウトするのが仕事だ。5年前ヤクルトに入社。東京でヤクルトレディを束ねる仕事をしていたが、インドネシアでヤクルトをもっと普及させたいと1年半前自ら手を挙げてやってきた。インドネシアではヤクルトレディを求人広告では集めない。一軒一軒訪ねてスカウトしていく。

長谷川さん:私たちの一番大事な基本が、地域の中に住んでいるということなので社員が足で歩いて探してくる。

 ヤクルトがまだ普及していないこの地域に広く伝えてくれる人材を探しているのだという。採用するのは23~38歳の主婦で3歳以上の子供がいることと決めている。子供のためにお金を稼ぎたい。その思いが売り上げアップに繋がるからだ。条件に合う女性を探し、根気強く家々を回る。
 インドネシアは人口の約90%がイスラム教徒というイスラム社会。女性は子育てなど家の仕事をするものだという考え方が未だに根強い家庭もある。この国でヤクルトレディになってもらうためには、家族の了解が必要なのだ。


この日長谷川さんは、あるお宅に5回目となる説得に向かった。そこで待っていたのは昔気質のイスラムの男だった。デヴィさん32歳。8歳の子供を持つ母親だ。2年前離婚したため現在収入がない。子供の学費を払うためにもヤクルトレディになることを望んでいる。しかし、首を縦にふらない家族がいた。父親のリリさん。

ヤ:ヤクルトレディの仕事はこの周辺だけで遠い所には行きません。メリットがたくさんありますよ。初期投資もいらない。1ルピアもいらないです。

しかし、リリさんの表情は変わらない。そこで今度はヤクルトがただの飲み物ではないことを強調する。

ヤ:何といってもヤクルトは人々を健康にする有意義な仕事なんですよ。

しばらく考えて、ようやく受け入れてくれた。家族全員が納得。
それにしてももう少し効率よく人を集める方法もありそうだが…

長谷川さん:家族の協力がないと一人だけで仕事するわけにはいかないので、家族の協力理解はすごく大事。遠回りに一見みえるけど非常に大事。


ヤクルト以外にもニッポン式遠回りで成功しているのがポカリスエットだ。
インドネシアは約90%の人がイスラム教徒。イスラム教徒にはラマダン(断食月)というのがあり、毎年9月(イスラム暦)の1ヶ月間、日の出から日没まで何も口にしない。ラマダン明けにポカリスエットを大塚製薬の社員が持って行ってタダで配った。その場所、その場所に行って配らなければいけないので手間も時間もかかるがおいしさや体に染み渡るような感覚を忘れられず、ラマダン明けはポカリスエットだという習慣を作った。

情報元:日本経済ちゃねる

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