2016年7月18日月曜日

先進国を差し置いて急成長するインドネシアのARスタートアップたち

このほど米国シリコンバレーで開催されたAR(拡張現実)の祭典「Augmented World Expo」(AWE)で、インドネシアの会社が先進国のライバルたちを差し置いて賞を獲得した。

 インドネシアのAR & Coは、そのAR技術を駆使したモバイルアプリ「Flying Farm」で、ベトナムのとあるミルクブランドの売り上げを19%も上昇させた。その実績により、AWEにおけるベスト・キャンペーン部門を受賞したのである。


彼らがこの賞を獲るのは実はこれが初めてではない。2015年度も、ナイジェリアの大統領戦でムハンマド・ブハリを勝利に導いたことで受賞をしている。その時、彼らが作ったのは、スマホの画面をブハリの写真や政党ロゴに向けるだけで、彼の大統領候補としての抱負がわかるモバイルアプリだった。

 さらに、それに先立つ2013年には、英国の経済誌The New Economyが定期的に選出する革新的企業40社(i40)のリストに初の東南アジア企業として堂々と入っている。


■インドネシアで初めてAR事業を展開し急成長

 AR & Coはインドネシアで初めてAR事業を展開した会社で、ジャカルタにて2009年に設立。現在はアジア最大のAR技術企業として、インドネシア国内はもちろん、シリコンバレー、バルセロナ、シンガポールにもオフィスを構え、世界17カ国ものプロジェクトを手がけている。

 AR & CoのホールディングカンパニーであるWIRのチーフ・ビジネス・デベロップメント・オフィサーのピーター・シアラーさんは、「インドネシアの我々が世界で勝負できる秘密は、欧米に引けをとらない品質を低予算で実現できることだろう」と語っている。

 このWIRが、AR & Co以外にも次々とテクノロジ、主にARをベースにしたスタートアップを生み出している。WIRは同じ志を持った6人の若者が集まって作った会社で、社名は「We Indonesia Rocks/Rules」の略。世界を舞台に活躍するインドネシア人の誇りを表現している。

 傘下のスタートアップには、たとえば店舗に設置する小さなスクリーンを展開する「DAV」がある。通りすがりの来店者に声をかけたり、宣伝対象の商品をスクリーンにかざすとゲームができたりするなど、インタラクティブに楽しめる広告メディアだ。端末そのものがDAV君というキャラクターの形で親しみやすくなっている。


従来の広告と違うところは、消費者が積極的に店頭の商品を手にとるよう促すことができる点。これにより、どのエリアでどの時間帯に多く商品が手にとられているかといったデータも収集できる。現在、ジャカルタとスラバヤで、地元大手小売店のアルファグループ(アルファマート、アルファミディ、ローソン)と組んで展開を始めている。今後は性別や年齢なども判別できる機能も開発中とのこと。

 そのほかのスタートアップとして、この7月にスタートしたばかりの「Mindstores」がある。ARとVRを駆使した3Dバーチャル店舗で、主婦でも学生でも誰もが100万ルピア(約8000円)さえ払えばスマホ上に自分のショップを持つことができる。


現在、コンビニのアルファマートと提携をしているが、大型のものやアクセサリーなど、店頭ではあまり売られていない商品を主に取り扱っている。売り上げはオーナーへのコミッションやポイントという形で還元される。

■ユニークな経歴をもつ創業者

 WIR創立メンバーであるピーターさんはユニークな経歴の持ち主だ。ジャカルタの高校を卒業後、すぐにオーストラリアに渡り、マクドナルドや工場、レストランの皿洗いなどの仕事を1年半ほど転々とした。そして19歳の時に帰国し、父親の縫製業を1年間手伝ったあと、広告学校に入学した。

 21歳で広告代理店に就職したものの、数カ月で退職。制服専門の縫製会社をはじめ、ケータリング、オンラインのフードデリバリーサービス、レストラン、マジックショップなどを次々と起業。2008年に広告学校で出会ったパートナーとWIRを展開し、現在に至るという。


このような野心的な若い人材の斬新なアイデアと積極性が、インドネシアのAR業界を支えている。 現在ではたくさんの競合が生まれてきているが、この状況についてピーターさんは、「インドネシアにおけるARのエコシステムが育ってきている。我々も、月に最低2回はセミナーを開いて人材を育成している。DAVのコンテンツだって、誰が作ってもいいわけだ」と好意的に受け止めている。

情報元:CNET Japan

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